箱根:広重の傑作の一つ。朱印は湖水図とある。中央の岩肌を見せる急峻な山の形に心を奪われる。山中を大名行列らしき一行が進む。行列の笠だけを長く連ねて見せる。左遠方には雪の富士がぼかして描かれている。手前の山々にははっきりと輪郭線が見える。見た瞬間、はっと驚かされる本図は、どうしても名所江戸百景の「深川洲崎十万坪」を連想してしまう。微妙に使い分けられた岩肌の色合いが美しい。朝焼けの赤と相まって更に印象的。この山については、実景ではなく創作説、箱根の山ではなく伊豆のある山説など諸説あり、はっきりしないが、広重の中でもろもろリファインされ、芸術的に描き出されたものと思われる。注:「深川洲崎十万坪」・・・遠くの筑波山を背景に、獲物を狙う翼を大きく広げた鷲の図。

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                                        (C) Katumasa Ohbayashi