江尻:本シリーズには必ず宿場に寄る人、街道を歩く人が描かれているが、本図には描かれていない。唯一の風景画といってよい。手前には清水港の家々の屋根だけを単純化して描く。次に湊に停泊している帆を降ろした舟、湊に入ってくる帆船を描き、三保の松原を中景として配し、さらに奥には伊豆の山々を描く。伊豆の山々の青、茶、黒の色合いが美しい。海の中央から帆船の帆だけをだんだんに小さく描き、水平線の彼方に消している。広々とした日本的景色で、見るものを穏やかに、すがすがしくさせてくれる。日本唱歌の「海」の「松原遠く、消ゆるところ、白帆の影は浮かぶ・・・」を思い出す。

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                                        (C) Katumasa Ohbayashi