御油:(旅人留女)夕暮れの御油の旅籠屋街の一風景。「折り折りは 馬も御油にて 抱きつかれ」 (川柳)と詠まれている様に、御油の客引き女は強引だった模様。本図にもそうした様子がユーモラスに描かれている。太った留女のすさまじい客引きに旅人は首を締め上げられ苦しそうだ。後ろの旅人は、左に体をよじらせ逃げの格好。右の旅籠では留女に捕まったらしい旅人が盥(たらい)で足を洗おうとしている。両肘を木枠につけて飯盛女があどけない優しい眼差しで一部始終を見ている。何ともほほえましい場面。盥を用意している老女も客の機嫌をとろうと一生懸命だ。壁に掛かった講中札が、面白い。ネット上では見にくいが、右から「三拾五番」は三十五番目の宿場を示している。「東海道続図」は、勿論東海道五十三次。「彫工治郎兵ヱ」は彫り師の名前。「摺師平兵衛」は摺り師の名前、「一立斎図」は広重自身、大きな丸い「竹之内・・」は版元の保永堂を示している。浮世絵の中にちゃっかり宣伝している。道の奥には三人の旅人を適当な間隔で描いている。

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