宮:(熱田神事)宮とは熱田神宮のこと。日本武尊が使った草薙の剣が祀られていることで有名である。熱田神宮では五月五日に馬を奉納する神事があり、その後、荒馬を競わせる行事が行われた。手前の赤地の半纏のグループと、向こう側の藍色の半纏のグループが一生懸命に競っている。手前のグループを誇張して大きく描いている。手綱を持つ村人達の走る手足の動き、表情が面白く描かれている。特に一番先頭の男は厳しい表情で一群を引っ張っている。馬の尻を鞭振り上げて男が声を張り上げている。右端に朱色の鳥居の端だけを見せることによって、鳥居を猛スピードで通りすぎる臨場感が伝わってくる。左上部には旅人や店の人達が焚き火で見物している。二筋の焚き火の煙が、一群とは反対方向に立ち上り効果的。
 私事になりますが、熱田神宮は幼少の頃、すぐ目の前に住んでいて、よく遊びに行ったところです。縁日で両親が買ってくれた「外郎・・・ういろう」の味が忘れられません。今の高級な「ういろう」と違って、たぶん小麦粉で作られたもので、表面も中身も茶色で、てかてかして艶があり、甘く素朴な味がしました。見た目は今で言うと黒砂糖入りの蒸しパンに似ていました。50年以上も前のことです。

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