箱根::なんとも意味深な日本的情感漂う図である。情交の後に蚊帳から行燈のふたを押し上げて灯心に火を入れる図と思われる。男物の煙草入れ、夫婦茶碗、左手に握り締められた懐紙を描き、赤い長襦袢を覗かせなまめかしい。蚊帳のめくれ具合、茣蓙を僅かに見せるなど英泉の筆が冴える。背景には箱根の山々、芦ノ湖、富士山を配している。箱根の山々の山肌が小田原とはずいぶんと違う。広重が描いた箱根とよく似た図。句は「蚊帳に待つこころに更くる燈(ともし)かな」

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                  (C) Katumasa Ohbayashi