奥津:奥津は富士山を眺めるのに絶好の景勝地として昔から名高い。二人の旅人が石垣に腰を下ろし美しい景色を楽しんでいる。富士山を指さす白装束の男のの不自然な格好が不可解。湯上がりの女は夏らしく藍染めの浴衣を着て、手には虫かごを手にしている。なかなか品のいい色香が漂う。腰のあたりのラインは浴衣ならではのこと。浴衣の裾のなんと長いことか。畳には脱ぎ捨てられた衣服をしっかり描くあたりは、さすが美人画の名手英泉。足もちらりと覗かせる。句は「宿をかる月を又るるおきつ浪」又るるは待たるる、おきつ浪には地名の奥津をかけている。なかなかの佳品である。

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                    (C) Katumasa Ohbayashi