府中:安倍川の渡しを背景に描く。府中の街中よりも安倍川を描かれることが多い。安倍川餅は有名。広重の五十三次と同じである。広重は実際の渡りを描いているのに対して英泉は馬に荷を載せている馬子を丹念に描いている。ネット上でははっきりわからないが、馬の表情に親しみがわく。遊女らしい女は何となく自堕落の雰囲気を漂わせる。顔に掛かったほつれ毛、なみなみと水を入れた茶碗、右手に持った懐紙、襦袢の裾の乱れ具合、画面右側に描かれている丈の低い屏風、屏風から少しだけ覗かせる小物類等、英泉の趣味、芸は細かく冴える。顔、懐紙、茶碗、足の白さが印象的。着物のしどけなさに薄幸の境涯を感じてしまう。添えられた句は「酔いさめの水も気味よし春の風」心惹かれる一枚。

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                  (C) Katumasa Ohbayashi