新井:バックは舞坂側から新井の船着き場を目指してくる二艘の大名を乗せた特別にしつらえた船を描いている。広重の荒井では、舞坂側から荒井の船着き場を描いている。大名の船を描いているのは同じである。
新井の船着き場には旅人には難所の関所が待っている。
 前景には、幼い女の子が、年上の若い女性(姉か?)に手をひかれてどこか習い事にでも行く様子が描かれている。同じ紅色の扇子を、幼い女の子は右手に持ち、年上の女性は後ろ帯に差している。二人の着物の柄、色も地味で落ち着いている。どことなく、上品な感じが漂う。左側の黄色い大きな蝶に見入っているようだ。年上の下駄の向きに英泉の独特な好みがここでも見える。全体の色調では青が印象的である。左側の余白には狂句を入れる予定であったのであろう。狂句は新井から入ってないが、後版または後刷りのため何らかの事情、理由で省略されたものと思われる。境界の雲(新井から)の色の変化もこのことを例証しているものと思われる。

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                     (C) Katumasa Ohbayashi