吉田:本来は34番の宿場よしては二川が来るはずだが、残念ながら欠いている。吉田は、現在の豊橋である。背景には広重の吉田とほぼ同じように大名行列の橋渡りと山々を描いている。吉田城は描かなかった。広重の吉田城をかえって意識しすぎているのかも知れない。女性は旅籠付きの飯盛女が縁台で煙管を手に持ち、くつろいでいる。着物は地味目である。袖まくりした左手、肘が印象的。垂直に突っ張っているあたりに商売女らしい勝ち気な様子が感じられる。大胆な脚の姿態も英泉ならではのもの。前掛け、手拭い、川、山の青が空の赤と巧みにマッチして美しい。山々の太い稜線の描き方は英泉風。

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                     (C) Katumasa Ohbayashi