戸塚:衣装、髪型、品のいい身のこなしから御殿女中と思われる。衣装の上のブルーがシンプルさと相まって裾の模様と色合いと対比され印象的。牡丹に蝶の扇子を口元に当てて見つめる小箱には恋人からの文が入っているのであろう。江戸を早朝に立た旅人はこの戸塚あたりでで初日を終えた模様。本図は戸塚というよりも、保土ヶ谷にむしろ近い「さかい木」付近。バックの坂は品の坂と言われている。道標は武蔵の国と相模の国の境を示す。東海道中膝栗毛で弥次郎兵衛が、一首詠んでいる。 「玉くしげふたつにわかる国境」  添えられた句は、「戸の障るつや木の葉のかた時雨」。戸は勿論戸塚の戸、かた時雨は、ある特定の場所だけ降っている時雨。

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