三島:三島朝霧の図。蒲原の雪、庄野の雨と共に広重の代表作。雪、雨ときてここでは霧。ぼかし、影絵、シルエットで有名。日本的情感漂う傑作。手前から4層に分けられて描かれている。1、駕籠かき、馬上の旅人、右端の5本の木。 2、青でぼかされた層。三島神社の鳥居、人物の真後ろの木々、左端を奥へと歩く旅人、二軒の家。 3、黒でぼかされた層。二人の旅人、右端の神社の建物らしきシルエット。 4、一番後ろのかすかに見える家並み、木々。 駕籠かきの顔ははっきり描いているのに対して、駕籠と馬に乗る旅人、徒歩の旅人の顔は笠で隠されて見えない。このあたりにも静かな 情感が漂う一因。左端の青と黒でぼかされた旅人を見ていると、本当に奥へと歩いて姿が消えていくような錯覚に襲われる。人物真後ろの木々を青いベールで覆っているのが大胆かつ巧妙で不思議。青と黒のぼかしの対比が絶妙。
(C) Katumasa Ohbayashi