岡部:両側の急斜面に挟まれて真ん中を岡部川が三段の段差で流れる。かなり山奥の険しい山間を広重は、単純化した誇張で描いている。川の流れも帯のように描き、両側の急斜面も曲線を生かしてふっくらとシンプルに描いている。視線の位置は、向こうからかなり大きな薪を背負った木こり当たりに置かれている。川に沿った山道が、急坂であることがわかる。右斜面の杉らしい林立した木々の上部をカットしているあたりにも広重の芸術的センスが見られる。手前と向こうとに二人ずつの人物を配しているのも面白い。衣服の色にも違いを見せ工夫している。
(C) Katumasa Ohbayashi