池鯉鮒:(首夏馬市)ちりゅうと読む。現在の知立市。4月から5月にかけてこの池鯉鮒の宿の東の野原で馬市が行われた。野原では多くの馬が杭につながれている。今、着いたばかりの二人の農夫が馬を杭に繋ごうとしている。左側にも馬を引っ張る農夫が小さく見える。馬の毛並みは黒、茶、灰色、白といろいろだ。画面中央の松の大木には大勢の馬飼、馬喰達が馬の商談を進めている。この松を談合松と言った。この松を目指して弁当らしきものを売る商人二人が近づいている。広重は馬市の全景を捉えた。野原の草の色合いも場所により微妙に違えている。初めてみたとき、はっと驚かされた作品。やはり馬の姿に目を奪われる。この近くには、伊勢物語で有名な八橋杜若古蹟がある。
「かきつばたといふ五文字を上の句にすゑて旅の心をよめ」といひければいめる。
から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ
(C) Katumasa Ohbayashi