赤坂:背景は宮路山の雪景色。全面の雪景色ではなく木々の緑を覗かせている。右手前の木の幹、枝が木肌色というよりピンクがかっていて、一瞬花が咲いているように錯覚する。女は身支度に余念がない。色の取り合わせが上から下へのなだらかなラインと相まって実に美しい。淡い青と橙の対比と裾の鼠色も目を引く。下に置かれた帯、物入れ、つづら、カツラ箱、花飾りなども巧みに描かれている。技芸に優れた上品な遊女を思わせる。足の甲が盛り上がっているのはいつもの英泉のこだわり、趣向である。全体的に上品さが伝わってくる本図である。
(C) Katumasa Ohbayashi