池鯉鮒:「ちりゅう」と読む。現在の知立市。背景は満月の照る松並木の街道を馬上の武家と徒歩で旅する庶民を対照的に描いている。二人の旅人は何か話をしている。後ろの水色の法被の二人は、武家のお供であろう。女性は、お屋敷勤めの女中のようだ。紫の矢絣(やがすり)を着て、源氏物語を読み耽っている。積まれた冊子には、「胡蝶 蛍 常夏」、膝の前には、「桐壺 帚木 空蝉」、「紅葉賀」の題名が見える。教養の高さが伺える。帯の模様が矢絣とは対照的な曲線模様入れている。襦袢の緋色がアクセントになっている。これ以降の作品は見つかっていないので、本図が本シリーズの最終図である。
(C) Katumasa Ohbayashi