小田原:酒匂川(さかわがわ)を渡る図。江戸を背に小田原城、京方向を見る。幕府は警備、防衛上、酒匂川に橋を架けなかった。旅人は渡し場から川越人足に頼らなければ渡れなかった。駕籠は大勢の人足が担ぐ。雨、水深、川の流れの速さなど困難を伴うことが多かったであろう。ゆったりと落ち着いた気持ちで見られるのは箱根の山々の麓で切られた水平線と二本の川のラインが効果的に配されているためであろう。俯瞰的に川を渡る人々を克明に描いている。右上部隅に、小田原城が見える。人々と箱根の山々を重ねないアングル、山をなだらかに左にすーっと消していくあたりさすが広重だと思われる。

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                                    (C) Katumasa Ohbayashi