吉田:(豊川橋)右端の吉田城では、足場を組んで二人の左官が壁塗りをしている。目を引くのは細い足場に乗って手をかざして、豊川橋を渡る大名行列を見ている鳶の男である。ずいぶん危なっかしい格好ではあるが、ユーモアが感じられる姿態である。なかなか構図も興味深い。手前にある右端の城と、豊川橋と奥の山の遠景との対比が絶妙。欲張った構図とも言えなくもないが、広重の庶民への観光サービスと見たい。足場を組んだ吉田城が何ともほほえましくていい。手前の松が全体を引き締めるのに効果的。川の色にも工夫が見られる。手前の白、奥の深い青。

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                                       (C) Katumasa Ohbayashi