石部:(目川ノ里)目川の里は石部宿よりも草津宿に近い所である。旅人や駕籠かきなどが一休みするかなり大きな茶店・伊勢屋を描いている。目川は菜飯と田楽豆腐が名物であった。伊勢屋では馬が繋がれている。黒い目隠しの縦板で覆われ中の様子はよくわからない。女中が注文の品を運ぶ姿が見える。街道には、踊りを踊るグループ、それを振り返り、珍しそうに見入る三人の女連れの旅人、先を行く米俵を背負った農夫達が、描かれている。春らしく梅が咲き乱れている。後ろの山は広重の創作された山らしい。(他の作品でも創作しているものがあった)左側には三本の幟がはためく。本図は、東海道名所図絵、司馬江漢の「東海道五十三次画帖」と酷似していて、広重が参考にしたようである。(このことは他の浮世絵についても影響等が見られるが、諸説がありはっきりしたことがわからない。今後の研究成果に待つこととする。)春ののどかな街道の好ましい一風景ではある。

浮世絵目次  五十三次9  home   next 

                                       (C) Katumasa Ohbayashi