沼津:沼津の宿を背景にに女性が、化粧台に向かって、顔を剃っている図。鏡台の小箱には幾つかの引き出しが見える。さりげなく一段目の引き出しを少し開けて小物を覗かせている。畳には当時の白粉のブランド「美艶仙女香」の包み置かれている。緋縮緬、鏡のかけ布、右の黒い小箱の赤い色が艶っぽさを醸し出す。左脇の二枚の丸めたちり紙も効果的。沼図の宿は、広重の五十三次のそれとよく似る。添えられて句は、「剃刀の手あわせかろし春の風」 春風に吹かれて何を想うか。

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                      (C) Katumasa Ohbayashi