由井:背景には雲が棚引く富士山、白帆が何艘も浮かぶ清見潟、険しい薩た山を有名な景勝地として今でいう絵はがき風に美しく描く。旅芸人らしき女が、三味線を弾く。右端の大きな風呂敷包みで旅芸人と思わせる。手前には、小箱と長い煙管が置かれている。さりげなく小箱の引き出しが少し開けられている。女の足の指が英泉風にデフォルメされている。三味線のことはよくわからないが、小唄で用いられる爪弾きであるようだ。懐には白の筒状の紙入れが覗く。句は、「ほととぎすなくや、噂の雨らしき」

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                  (C) Katumasa Ohbayashi