掛川:背景は火伏せの神を祀る秋葉山への参道入り口の鳥居付近を描く。右手には茶店、旅籠が並ぶ。手前の茶店には旅人が休んでいる。鳥居には鳥が留まる。女は飯盛女で、商売女らしいたくましさが感じられる。海千山千のしたたかさがにじみ出ている。懐紙を口にくわえ、袖をまくり上げ、後ろ手で乱れた髪をなおしている。炬燵から落ちかかっている数冊の本は、馬琴の「南総里見八犬伝」であることがわかる。英泉は、この本の挿絵を担当していたので宣伝をかねて描いたものと思われる。女の衣装は黒を基調として地味であるが、女のたくましさを一層際だたせる。添えられた句は、「炬燵あるおく間や昼もうすくらき」

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                    (C) Katumasa Ohbayashi