袋井:枯れ枝の大木の生えた庚申塔の前での焚き火風景を背景に描いている。立ち上る焚き火の煙が実にダイナミックでインパクトがある。焚き火にあたっている男達の表情も面白い。左側には山々が緑と黒で色分けされ描かれている。女は寒さを防ぐための頭巾を被り、右手で褄を取り、やや腰をかがめている姿が寒そうだ。二匹の犬がかわいらしく描かれている。英泉らしい太い輪郭線が特徴。添えられた句は「榾の火やこつま取る手に覚へなき」 榾は「ほた」と読む。焚き火にする木切れ。英泉描くところの冬枯れ、寒さに凍える女の姿態にあった句である。覚へなきは手がかじかんで感覚がない。佳品。好きな一枚である。

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                      (C) Katumasa Ohbayashi