見附:天竜川の渡し場から遠く富士山を望む図。人々の様子を英泉にしては克明に描いている。手前の岸には、二人の旅人、駕籠かき。駕籠かきの表情が面白い。小天竜にはまさに漕ぎだしたばかりの高瀬舟をアップで描写。二人の船頭は力強く漕いでいる。青と赤の半纏で対比させている。客達は思い思いの表情で舟に揺られている。向こう岸には真っ正面に富士山の雄姿と険しい山々、見附の宿の家並みが見える。やや膝を浮かせて後ろ姿の女性は、文を広げて読んでいる。黄色地の小紋に緑色の帯を結んでいる。旅籠女郎のようであるが、表情に知性的な品の良さが漂う。英泉の好みであろうか、後ろ手の指の格好、表情が独特で不思議である。添えられた句は、「廻文  月もほし入り江のへりゐ汐も来つ」

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                     (C) Katumasa Ohbayashi