濱松;街道では暴れ馬を筋肉隆々の馬喰が押さえ込んでいる姿がまず目を引く。面白い光景。右には茶店の端がわずかに見え、縁台に一人の旅人が休んでいる。水面の奥に見える赤い鳥居と社は、定かではないが諏訪神社のようだ。手前の緑のなだらかな山と後ろの黒い険しい山々と対比的に描かれている。右手には、地名にゆかりの大きな松の枝が覗く。女性は、大事そうに赤い紐で結わえた冊子らしきものを抱えている。左手には畳まれた日傘を持つ。どことなく品が漂う女性のようだ。下駄の向きがやはり英泉好みに変化を持たせている。添えられた句は「はつかしき方へ 向けゆく日傘かな」

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                    (C) Katumasa Ohbayashi