川崎:背景は広重の川崎と同じく六郷の渡しから川崎の船着き場を望む図。土手には木が描かれているが、更に奥には薄く霞んだ木々が見え、町のたたずまいを感じさせる。広重の「三島」のシルエットを思わせる。船着場は客でにぎわう。英泉描くところの女性は、珍しく町娘か。川崎の大師詣でにでも行くのであろう。桜をあしらった粋なデザインの大振袖に春の行楽の気分が漂う。表情、身のこなしに初々しさが感じられる。裾あたりに緋色が覗く。さすがは美人画の名手英泉。添えられた句は「渡し待つ間を摘みにけり春の草」 好きな一枚。
(C) Katumasa Ohbayashi