日本橋:(行列振出)早朝の日本橋には先頭が渡りきる大名行列、魚売り、野菜売りを始めとした庶民の姿がいききと描き出されている。アーチ状の太鼓橋を二人の箱持ち、毛槍持ちが先陣を切る。犬と戯れる男(赤い箱の文字、丸竹は、版元の保永堂の号)、子供、商人、花屋、おかみさん、町娘、・・・。左端の白装束姿は南蛮渡来人のようである。江戸庶民の姿を全部網羅しているかのようである。国際都市江戸。橋の左には庶民への御触書である高札場、反対側には一本の立て札が見える。右の家の塀には深い菅笠を被って本を読んでいる者も描いている。花桶に見える紅いつぼみは、梅か桃のようだ。橋の後ろには火の見櫓が火事と喧嘩で名高い江戸を見守っている。朝焼けを背景に江戸が活動し始める図。じっと見ていると今にも人々の賑やかな声が聞こえてきそうだ。本図は再刻版でかなりの人々が追加されている。広重の意気込みが感じられる。初刻版の題名は朝之景。今の日本橋は、高速道路下にあって昔の情緒、風情がない。最近の新聞記事によると地元商店会の人々が、首都高速道路を地下に持っていこうと密かに思いを巡らしているとか(参考:日本橋地域100年ルネッサンス委員会)。次は品川の宿。(H16、2、2加筆修正)。
(C) Katumasa Ohbayashi