鞠子:とろろ汁で有名な鞠子。本図もとろろ汁の店を描いている。真横から描いた広重とは違い、左斜めから英泉は描いている。店の看板には「名物とろろ汁」「一膳めし」「酒肴」の文字が見える。三人の客が楽しそうに語らっている。右手には旅人を乗せた駕籠が到着する。空には数羽の鳥がねぐらへ帰る。飯盛女が浴衣姿で縁台に腰かけてくつろぐ。大振りの桔梗の絞り模様がゆったりとした、さわやかな感じにさせる。腕まくりした腕の白さが何とも言えずいい。右の腿のタオル、縁台から少しはみ出した団扇、裾から覗く下駄等、英泉の粋を感じる。添えられた句は、「駕籠しはし跡に声ありほととぎす」
(C) Katumasa Ohbayashi