御油:背景は賑やかな宿場の様子を描く。馬に乗った旅人、徒歩の旅人、手前には会話を交わす駕籠かきと旅人、駕籠で休む駕籠かきが丹念に描かれている。旅籠と山の青が目を引く。女は、網目模様地に大きな蝶をあしらった浴衣を着て、鏡に眉を紫のたすきで隠して、自分の顔を映している。眉は結婚後、妊娠したとき本元服と言って剃った風習があった。幸せな結婚にあこがれる宿場の女郎の気持ちがよく出ている。右のかごには茄子と包丁が見える。お歯黒と関わりががあるようだ。浴衣の裾から覗く足の格好は英泉流。相当無理な格好でも英泉は描く。浴衣の赤がインパクトがある。
(C) Katumasa Ohbayashi